タイトル

食事は美味しく安全に

【利用者情報】

90歳代 女性

身障手帳:2級 ろうあ

疾病:心肥大疑い、甲状腺腫瘍、変形性膝関節症、白内障

要介護度:4

 

 

【生活歴】

原因は不明であるが生後間もなく耳が聞こえなくなった。母より裁縫や編み物は習っていたが、教育を受ける機会がなく手話等は習得できず、両親とは手まねでコミュニケーションを図っていた。他人との接触はなく両親の保護の元に暮らしていたが、両親が病気治療の為入院となると妹夫婦の援助を受けながらアパートにて単身生活を開始。その後単身生活の継続が困難となり、フローラの前身である布施救護院に入所、その後、継続して当施設で生活をされている。

 

【支援過程】

ご本人は、90歳を過ぎてもトイレに行く等の身のまわりの事はある程度自立されていました。ご本人とのコミュニケーション手段は簡単なジェスチャーで行っており、細かい部分までの理解は困難でしたが、日々の暮らしから自分の事は自分で行うという意志を強く持っておられるようでした。年齢を重ねるごとにADLの低下が見られ、比較的自立度の高いコミュニティから見守りのあるコミュニティに居室変更となりました。

ご高齢ということもあり、約1年前から飲食時に咽せる姿が多くなりました。特に水分での咽が見られるようになり、トロミ剤を使用する事となりました。元々水分の摂取量が少ないのか、トロミをつけた飲料はおいしくないのか促して飲んでもらう事が増えてきました。

併せて、食事での咽や摂取量の低下が見られたので、米飯をお粥にしたり、副食を刻みにしてお粥に混ぜたり、朝食をパン粥に変更、お茶をゼリーにして提供等、ご本人の様子を見ながら医務や栄養士と相談し食事形態の見直しをしてきました。また、これまで食事を残されることがなかったのですが、ご本人の味覚が変わったのか甘味の少ないものや味の薄いものなどは残されるようになったので、お茶ゼリーに甘味をつける等思いつく範囲でありますがいろいろと試してきました。しかし、昨年6月頃から段々と咽る事が増え、食事量の低下が顕著になってきました。当施設はペースト食の提供は行っていませんが、ご本人の摂取状況ではペースト食が適切であると判断し検討した結果、ブレンダーでペースト状にして提供、栄養を補うために朝食には高カロリーのムース、日中には水分補給を兼ねて牛乳等をゼリー状にして食べてもらうことにしました。食事をペースト状にする時は水分を足すので、どうしても味が薄くなりがちですが、調味料などを使用して味を整えたり、牛乳ゼリーを作るときはフルーツ缶で甘味をつけたりして少しでも美味しくたべていただけるように試行錯誤しながら支援をしています。

 

 

 

 

【感想】

時々職員が介助する事もありますが、基本はご自身でスプーンを使用して食事を召し上がっておられます。食事の様子を見ていると職員の介助とご本人の食べたいと思う気持ちが合わないと咽てしまう事があると感じました。また、提供するものによっては食べるスピードや咽せる回数が違います。特に甘味の強いものなどはご本人の嗜好に合っているのか咽なく召し上がられます。

 私達でも嫌いな物を食べる時はお箸が進まない事が多々あるので、何歳になっても食事は美味しく食べるのが一番と感じました。ただご高齢になると美味しさだけではなく安全に食べる事も重視されます。今回の支援を通して安全=美味しさの両立は難しい事も多いけれど、必要であることも感じました。

試行錯誤しながらですが、今後もご利用者様の希望に沿った支援が実現できるよう努めて参ります