タイトル

急ぐ気持ちと裏腹に・・・

 

【利用者情報】

60歳 男性

障 害:アルコール依存症

疾 病:白内障 脳梗塞 他

 

【入所に至る経緯】

 20代で結婚。子供をもうけるが、その後妻と死別。子供が自立して家を出た頃より、飲酒をするようになる。会社を自主退社したころよりさらに飲酒量が増え、アルコール多飲による食欲不振で倒れ入退院を繰り返す。家賃滞納により、退院後も居宅を構えられず当施設入所となる。

 

【支援過程】

 入所後数日から数週間で退所して居宅生活が出来ると考えておられ、入所当初より「なぜこのような施設で暮らさなければなさないのか」と不満を訴えておられました。

 入所前は飲酒により消化器系の状態を悪化させ、食事が出来ずに倒れては救急搬送を繰り返す生活により、身体の複数箇所の治療や養生が必要な状態でした。また、仕事がままならなくなり退職されていた事から、所持金が少なく債務がありました。

 入所後、まずは両眼の治療と手術、その他必要となる診療科への定期通院支援を開始しました。ご本人は施設生活への閉塞感を訴えておられましたが、福祉事務所の担当ケースワーカー(以下、実施機関と表記)とご家族は入所前の飲酒状況や金銭管理の問題から「向こう3年は施設生活が望ましい」との見解でした。

 ご本人は「仕事をしながら居宅で暮らし、お母様のお世話をすること」を望んでおられました。一足飛びに居宅生活への移行は難しいのではと説明致しましたが、焦る気持ちから「生活保護が廃止になっても退所する」とおっしゃることもありました。

 そこで、担当職員よりご本人の希望を実現できるよう対応を検討し、ご本人と実施機関、ご家族での会合を設けた結果、当初の3年ではなく「1年を目途に居宅生活へ移行しても良い」と実施機関とご家族から同意を得ることができました。

 その後は居宅生活への移行に向けて、アルコール依存症の治療のためアルコール外来への定期通院と、断酒会への参加・債務の返還手続きの開始・携帯電話の契約・物件探しを開始しました。

 そして上記の準備が順調に進み始めた頃、脳梗塞が起こり救急搬送されました。暫くは障害が残りましたが、リハビリに励まれ、退院後は居宅生活への準備を再開することが出来ました。入所後、さまざまな困難がありましたが約1年後、無事に居宅生活を始められました。

 

 

【感想】

 ご本人の希望と施設の生活にギャップを感じる方はたくさんいらっしゃいます。依存症や精神疾患などをお持ちの方も、家事や趣味など他の生活分野で優れている場合があり、すぐにでも独立した生活が可能だと思う事もあります。ただ、実際には依存を繰り返してしまったり、服薬の管理が出来ずに生活が破綻するケースも沢山ありました。社会資源を整えるなどして、出来るだけ長期に渡って地域での生活を継続できるように準備、支援することが大切だと感じています。