「また、迎えにきてや!」
【利用者情報】
80歳代 女性
家族:義弟夫婦
療育手帳:程度A
疾病:糖尿病、腰痛、高血圧、抹消神経障害、
老人緑内障オペ後のケア、白内障、骨粗鬆症、
網膜剥離(左目 平成5年4月手術)、
乳癌(平成30年8月)、急性胆のう炎(平成30年8月)
【生活歴】
出生後3ヶ月で実の母が死亡。以後、祖母に育てられた。幼少期に脳膜炎を患い疾病の原因となる。父親の再婚を機に来阪し小学校に通学するも続かず、昭和23年から子守として勤める。住み込み店員として働いていたが、家族による本人の援助が困難なことや将来に不安が感じられたことから入所することとなりました。
【支援過程】
ご本人は、フローラでの生活が長く「体が動かなくなるまではフローラで生活がしたい」との希望を強く持っておられました。ご高齢ということもあり急性胃腸炎、腸閉塞、肺炎や血糖コントロールなどの理由で平成21年~平成30年の間に17回の入退院を繰り返し、施設移行に向けて検討していました。その矢先に乳がんが発覚、急性胆のう炎も併発していましたので手術治療が施されました。療養後は、体調を崩すこともなく、フローラでの生活が続けられるほどに回復しました。
その後、ご本人の体調に合わせて食事形態を見直してきましたが、徐々にご本人が体調不良を訴えられる機会が増えてきました。ご本人は食に対する意欲はあるものの、年齢的な低下、肉・油・香辛料系の食事を食べると気分不良や嘔気を訴えることから食べられるものが少なく、栄養バランスに偏りが出てしまい、血糖コントロールが困難な状況になりました。朝食のパンを調整して提供したり、おやつは糖質が控えめな物に変更したりと個別の対応を行いましたが改善には至りませんでした。そのうち、高血糖によるものか意識がもうろうとする日が生じるなど、急激な体調の悪化が見られるようになりました。体調の悪化を受けて、施設移行や成年後見人選任手続きなどを視野に入れた支援を進めていくことになった矢先、癌の再発が発覚しました。医師によると恐らく肝癌の末期だろうとの見解でした。その頃には、ご本人の体調は悪化の一方で、横になって過ごす時間が増え、施設生活が困難となり入院加療が開始されました。
病院でご本人様と別れる際には「また迎えに来てや!」と話しておられましたが、これが職員と交わした最後の言葉となってしまいました。
最期はフローラで葬儀が営まれ、多くの方に見送られ、旅立たれました。
【感想】
30年以上にわたる年月をフローラで過ごされました。ご本人が持っておられたアルバムには懐かしい写真も多くありました。共に過ごした日々はやはりかけがえのないものです。
入院中も「フローラに帰りたい」と頻りに話しておられたと看護にあたって下さった方からお聞きしています。ご本人は「最期までフローラにいたい」「動けなくなるまで、フローラにいたい」と強く希望されていました。最後に交わした『また迎えに来てや!』というご希望は叶いませんでしたが、最後まで施設として可能な範囲でご本人のご希望に添えたのではないかと思っていただければ幸いです。
引き続き、ご利用者様の希望に沿った支援が実現できるよう努めて参ります。